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大阪地方裁判所 平成9年(ワ)9458号 判決 2000年1月25日

原告 川口水産株式会社

右代表者代表取締役 A

右訴訟代理人弁護士 小松陽一郎

同 池下利男

右補佐人弁理士 B

被告 株式会社イキルン

右代表者代表取締役 C

被告 C

右被告ら訴訟代理人弁護士 野村公平

同 筒井豊

主文

一  被告株式会社イキルンは、別紙第二目録記載の方法により、植物からミネラル成分を抽出してはならない。

二  被告株式会社イキルンは、別紙第一目録記載の製品を、販売し又は販売若しくは貸渡しのために展示してはならない。

三  被告株式会社イキルンは、別紙第二目録記載の方法により抽出したミネラル成分及びこれを含有する別紙第一目録記載の製品及びその半製品を廃棄せよ。

四  被告株式会社イキルンは、原告に対し、金六九七万七三九三円(内金四四四万七八二七円については被告Cと連帯債務)及び内金四七一万二一三五円に対する平成九年九月二七日から、内金二二六万五二五八円に対する平成一一年四月一日から、それぞれ支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

五  被告Cは、被告株式会社イキルンと連帯して、金四四四万七八二七円及び内金二四八万二五六九円に対する平成九年九月二七日から、内金一九六万五二五八円に対する平成一一年四月一日から、それぞれ支払済みに至るまで、年五分の割合による金員を支払え。

六  原告のその余の請求を棄却する。

七  訴訟費用は、これを二分し、その一を被告らの連帯負担とし、その余を原告の負担とする。

八  本判決の主文第四、第五項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  主文第一ないし第三項同旨

二  被告らは、原告に対し、金二二一〇万四〇〇〇円及びこれに対する平成九年九月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要等

本件は、発明の名称を「植物からミネラル成分を抽出する方法」とする別紙特許権目録記載の特許権(以下「本件特許権」といい、その発明を「本件特許方法」という。)について専用実施権を有する原告が、被告株式会社イキルン(以下「被告会社」という。)に対し、被告会社は、本件特許方法の技術的範囲に属する別紙第二目録記載の方法(以下「被告方法」という。)によりミネラル成分を抽出して別紙第一目録記載の製品(以下「被告製品」という。)を製造して販売しているとして、その方法の使用、製品の販売の差止め等を求めるとともに、被告らに対し、損害賠償を請求している事案である。

被告らは、被告会社が被告方法を実施していること及び被告方法が本件特許方法の技術的範囲に属することをいずれも認めた上で、被告会社が被告製品にかかる事業を承継した有限会社宮本及び被告C(以下「被告C」という。)は、本件特許権の出願日より以前から被告方法を実施していたから先使用に基づく通常実施権を有する、などと主張している。 一 争いのない事実及び証拠により明らかな事実

1  本件特許権

(一)  Dは、本件特許権を有していた。

(二)  本件特許権は、平成七年四月二二日、Dの死亡により、Eに相続され、平成八年一一月一八日に相続を原因とする本権移転登録が完了した。

(三)  川口水産有限会社は、昭和六三年二月二五日、本件特許権につき、特許権者から範囲を全部とする専用実施権の設定を受け、同年五月三〇日にその登録を了した。

(四)  平成元年六月二七日、川口水産有限会社は、川口水産株式会社(原告)に組織変更した。原告は、川口水産有限会社の有する権利義務を包括的に承継し、本件特許権の専用実施権につき、平成八年八月二六日、専用実施権者の表示変更の登録を了した(以下、組織変更前後を特に区別せずに原告という。)。

(五)  原告と有限会社宮本は、昭和五七年一一月一七日、「変退色防止剤」について、製造者を原告とし、販売者を有限会社宮本とする商品取引契約(以下「本件契約」という。)を締結した。(乙9)

(六)  原告は、有限会社宮本に対し、本件契約に基づいて、変退色防止剤あるミネラル成分を、昭和五七年一一月ころから昭和五八年七月ころまで継続的に販売し、また、昭和五九年三月にも販売した。

2  被告らの行為

(一)  被告会社は、被告方法を使用して被告製品を製造し、これを販売、製造又は販売のために展示している。

(二)  被告Cは、被告会社及び有限会社宮本の代表取締役であり、右各行為を代表者として指揮している。

3  被告方法は、少なくとも本件特許権の特許請求の範囲請求項1の発明の構成要件をすべて充足する。

また、被告製品は、本件特許権の特許請求の範囲の請求項1及び同2の方法を使用することにより、本件特許方法の作用効果と同一の作用効果を奏している。

三  争点

1  被告会社は、本件特許権につき、先使用に基づく通常実施権を有するか。

被告Cは、本件特許権の出願日より以前に被告方法を発明し、有限会社宮本はこれを実施していたか。また、被告会社は、有限会社宮本の被告製品にかかる事業を包括的に承継したか。

2  原告の本件特許権に基づく請求は、権利濫用となるか。

本件特許方法は、本件特許権の出願日より以前に公然に実施されていたか。

3  原告の損害

四  当事者の主張

1  争点1(先使用に基づく通常実施権)について

【被告らの主張】

(一) 被告会社が被告方法を使用して被告製品を製造、販売するに至った経緯は、次のとおりである。

(1) 被告Cは、昭和四八年ころから青果物の鮮度保持・蘇生・成長促進に関する実験研究を行った結果、昭和五六年ころまでには、木炭の炭焼きにより発生する灰に酢酸水溶液を加えて中和し、ミネラル成分を溶液層に抽出する方法を完成するとともに、そのミネラル成分が青果物の鮮度保持・蘇生・成長促進に効果があるとの知見を得た。右方法は、本件特許方法と同じ方法であり、被告Cは、当該方法を独自の実験研究に基づいて創作した。

(2) 被告Cは、昭和五六年一一月ころ、自ら全額出資している有限会社宮本において、右の方法を用いてミネラル成分を抽出した溶液を青果物の鮮度保持剤や成長促進剤として製造販売することを企図した。

そこで、被告Cは、知人であるDが、以前から炭焼きにより発生する灰に酢酸水溶液を加えて中和してミネラル成分を溶液層に抽出する方法を実施しており、昭和四二年ころにそのミネラル成分について「ペーハー並びに風味調整安定剤」の名称で特許出願をしたことがあると聞いていたことから、同人に対し、その下請製造を依頼した。

Dは、当時、原告に雇用されていたが、被告Cの依頼に対し、自分自身で下請生産をすることはできないが、原告が下請製造することは可能であるということであったので、被告Cは、原告に前記ミネラル成分の下請製造を委託することにした。

(3) 昭和五七年一一月一七日、有限会社宮本は、原告との間で、本件契約を締結し、原告に対し、取引保証金一〇〇万円を支払った。

(4) 有限会社宮本は、本件契約に基づき、昭和五七年一一月二九日ころから昭和五八年七月一二日ころまでの間に、Dが製造責任者となり、原告が前記の方法(炭焼きにより発生する灰に酢酸水溶液を加えて中和し、ミネラル成分の溶液層に抽出する方法)によって下請製造したミネラル成分の溶液を同社から購入し、これをフィルム製の小袋に詰めたものを「イキルン」等の商品名で一般に販売した。

(5) ところが、昭和五八年六月ころ、原告が製造したイキルンについて、品質の悪さのために一般購入者から苦情が寄せられた上、原告がこれについて誠実な対応をしなかったため、有限会社宮本は、同年八月ころに原告との取引を事実上中止し、そのころから自社において、被告Cが自らの実験研究により昭和五六年ころまでに完成していた方法によりイキルンの製造を始め、同年八月中にはその販売も開始した。

(6) その後、有限会社宮本は、被告Cが全額出資して昭和五九年一月二〇日に設立した被告会社に対し、その製造設備を含めてイキルンの製造販売に関する事業を全部譲渡した。そして、被告会社は、右により譲り受けた事業をそのまま承継して現在に至っている。

(二) 被告会社は、本件特許権について先使用に基づく通常実施権を有しており、被告会社が被告製品を製造、販売する行為は、本件特許権を侵害しない。

(1)<1> 有限会社宮本は、代表者である被告Cが本件特許方法の内容を知らないで創作した方法を用いて、本件特許方法の出願日以前である昭和五八年一〇月一八日より前から被告方法の実施である事業(イキルンの製造及び販売の事業)を行っており、又は少なくともその事業の準備をしていたものである。有限会社宮本が実施していた被告方法は、本件特許方法と実質的に同じ技術内容であることから、有限会社宮本は、本件特許権について先使用に基づく通常実施権を取得した。

<2> 原告と有限会社宮本との前記商品取引契約では、その商品であるミネラル成分(変退色防止剤)については有限会社宮本が全販売権を有すること、即ち、原告は製造したミネラル成分の全部を有限会社宮本に納品しなければならず、原告は自らミネラル成分を販売しないことが定められており、原告は、有限会社宮本の完全な下請製造者として、ミネラル成分の製造を担当していた。原告が行ったミネラル成分の製造方法は、Dが創作した本件特許方法と同一であるとともに、被告Cが独自に開発した方法とも同一である。

したがって、原告が商品取引契約に基づいて行ったミネラル成分の製造は、法的には有限会社宮本の行為と評価することができ、かつ、その製造方法は被告Cが創作した方法と同一であるから、原告の製造は有限会社宮本の先使用権の範囲を確定する先使用の事実を構成すると解すべきである。

(2) 被告会社は、設立日である昭和五九年一月二〇日の直後に、そうでないとしても設立から現在までの間に、有限会社宮本から同社のイキルンの製造及び販売に関する事業の全部を譲り受けたものであり、この結果、被告会社は、右の事業の全部の譲受けとともに有限会社宮本が有していた前記先使用に基づく通常実施権も譲り受けた。

また、被告会社及び有限会社宮本は、いずれも被告Cが全額を出資する会社であり、被告会社は有限会社宮本の「イキルン」に関する事業部門を独立して別の会社としたものに等しい。したがって、前記先使用に基づく通常実施権を有する有限会社宮本と被告会社とは、実質的な同一性を有することから、被告会社がその設立に伴って有限会社宮本の有する本件特許権についての先使用に基づく通常実施権を承継した。

【原告の主張】

(一) 被告Cが、昭和四八年ころから青果物の鮮度保持・蘇生・成長促進に関する実験研究を行っていたという事実、昭和五六年ころまでには、ミネラル成分を溶液層に抽出する方法を完成したという事実、そのミネラル成分が青果物の鮮度保持・蘇生・成長促進に効果があるとの知見を得たという事実はいずれも知らない。

(二) 昭和五六年一一月ころ、被告CがDにミネラル成分を被告方法で抽出した溶液の下請製造を依頼したとの事実は知らない。

(三) 被告Cが原告に対し、被告方法でのミネラル成分の下請製造を委託したという事実は否認する。

本件契約は、その表題や契約内容から明らかなとおり、商品取引に関する契約であって、原告は、その製造する変退色防止剤を有限会社宮本に卸していたにすぎない。

(四) 有限会社宮本が、昭和五八年八月ころからイキルンを自社で製造するようになったとの事実は知らない。

(五) 有限会社宮本が、昭和五九年一月二〇日に設立した被告会社に、製造設備も含めてイキルンの製造販売に関する事業の全部を譲渡したとの事実は知らない。

有限会社宮本は、「イキルン」の商標登録(第一八一二〇一七号)、「IKILUN」の商標登録(第一八九二七一四号)を受けており、これら商標権は、いまだ有限会社宮本が保有している。また、有限会社宮本は、被告会社設立後である昭和五九年二月八日に、「青果物の鮮度保持方法」という発明及び「発芽種子の発芽率を向上させる方法」という発明について特許出願し、前者は平成四年四月二一日の拒絶査定に至るまで一貫して有限会社宮本が特許を受ける権利を保有していたし、また、後者も、平成四年三月一七日に至るまで有限会社宮本が特許を受ける権利を保有していた。このように、被告らが主張する昭和五九年一月二〇日以降も有限会社宮本はイキルンの製造及び販売に関する事業を有しているのであるから、被告会社は、有限会社宮本から実施の事業とともに先使用に基づく通常実施権を譲り受けたとはいえない。

2  争点2(公然実施)について

【被告らの主張】

(一) 原告は、本件契約に基づき、同社の下請製造者として、本件特許方法と同じ方法を実施してミネラル成分(イキルン)を製造し、これを同社に販売してきた。

当時原告が実施していた方法は、少なくとも被告らの関係者には知られていたとともに、被告らの関係者は、必ずしもその製法について明確な秘密保持義務を負っていなかった。

したがって、本件特許方法は、その特許出願前に公然実施されていたものであるから、特許要件を欠くものである。

(二) 原告は、右事情を知りながら、昭和六三年五月三〇日に本件特許権の専用実施権の設定登録を受け、出願人であるDが死亡した後に本件訴訟を提起したものであり、これらの事情を併せて考慮すれば、原告の本訴請求は権利の濫用である。

【原告の主張】

争う。

3  争点3(損害)について

【原告の主張】

(一) 被告会社は、平成三年四月一日から平成一一年三月三一日に至るまで、少なくとも年間一億二二八〇万円の被告製品を製造、販売した。

(二) 本件は、本件特許方法を用いて製造された製品の供給を受けていた被告Cが、いまだ商品取引契約が存在するにもかかわらず、本件特許方法の出願後に自ら本件特許方法を用いて被告製品を製造、販売したものであり、被告会社の顧問になっていたFが本件特許方法の出願に関与していたことをも考慮すれば、被告Cが本件特許方法の出願及びその内容を知りながら、故意に本件特許方法を実施し、本件特許権を侵害していたものであり、その侵害の態様からしても悪質きわまりない。

したがって、平成一〇年改正特許法一〇二条三項の趣旨からすれば、少なくとも売上高の五パーセントが実施料相当額として妥当である。

(三) 被告会社は、実質的には被告Cの一人会社であり、被告Cと被告会社がその実質的な関係から一体であることは、被告ら自身が主張しているところである。そして、右に記載したとおり本件特許方法の出願に関与したFを被告会社の顧問にする等して、被告C自身が本件特許方法の出願及びその内容を知りながら、故意に被告製品の製造、販売を行ったものであって、被告製品の製造及び販売行為は、被告会社と被告Cの共同不法行為を構成する。

(四) よって、原告は、被告らに対し、平成三年四月一日から平成六年九月二六日(訴状送達の日から遡ること三年に当たる日)までの期間の被告製品の販売に関しては実施料相当額の不当利得返還請求権を有し、平成六年九月二七日から平成一一年三月三一日までの期間の被告製品の販売に関しては、実施料相当額の不法行為に基づく損害賠償請求権を有する。

したがって、平成三年四月一日から平成一一年三月三一日までの間の被告らの行為による原告の損失及び損害は、一億二二八〇万円の八年間分の売り上げに実施料相当額である五パーセントを乗じた四九一二万円となる。

(五) 本件訴訟の弁護士費用としての原告の損害は、一〇〇万円が相当である。

(六) したがって、原告は、被告らに対し、不当利得及び不法行為に基づく請求権合計五〇一二万円の内金として二二一〇万四〇〇〇円の支払を求める。

また、右金員の附帯請求として、右金員のうち、平成三年四月一日から平成九年三月三一日までの損失及び損害については訴状送達の日の翌日である平成九年九月二七日を、平成九年四月一日から平成一一年三月三一日までの損害及び弁護士費用については、右請求原因の変更にかかる書面が被告らに送達された日よりも後である平成一一年四月一日を附帯請求の起算日として、それぞれ支払済みに至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

【被告の主張】

争う。

第三当裁判所の判断

一  争点1(先使用に基づく通常実施権)について

1  前記第二の一の争いのない事実に加え、後掲各証拠(枝番が付されているものは、すべて含むものとする。)と弁論の全趣旨を総合すれば、次の各事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

(一)  被告Cは、昭和五六年一一月ころ、ミネラル成分を抽出した溶液を製造、販売する事業を開始することを企図し、被告Cが代表取締役である有限会社宮本とかつて取引関係にあった岡三株式会社を訪問した。

被告Cは、同社の代表取締役をしていたDから、同人が、「ペーハー及び風味安定剤」との名称で、ミネラル成分を抽出した溶液について特許出願をしたことがあると聞いていた。(乙1、乙8、弁論の全趣旨)

(二)  被告Cが大阪府貝塚市にある岡三株式会社を訪れたところ、同社は昭和五五年一〇月二二日に破産宣告を受けたこと、D及びその息子であるEは、同社の破産にあたって什器等を引き取った経緯のある原告に雇用されていることが分かった。(乙1、乙4)

そこで、被告Cは、和歌山県有田市に所在する原告を訪れて、Dにミネラル成分を抽出した溶液の製造を依頼した。Dは、被告Cの依頼に対し、自ら製造することはできないが、自分が製造責任者となって原告が製造するという形であれば可能であると答え、その方向で話を進めることになった。(乙1、弁論の全趣旨)

(三)  原告は、昭和五七年九月九日、和歌山県工業試験所に対し、ミネラル成分を抽出した溶液の成分分析を依頼し、その結果を同月二一日ころ受領した。(乙29)

(四)  昭和五七年一一月一七日、原告と有限会社宮本は、ミネラル成分を抽出した溶液の製造、販売について、概要、以下のとおりの内容の本件契約を締結した。(乙9)

(1) 原告は、変退色防止剤(ミネラル成分を抽出した溶液)を製造し、被告Cは右商品の全販売権を保有する。

(2) 契約期間は五年とする。

(3) 原告は研究製造に専念し、そのために有限会社宮本は右商品の情報、データを提供する。

(4) 有限会社宮本は、原告に対し、取引保証金として、一〇〇万円を支払う。同金員は、契約解除の場合には返還するものとする。

(五)  原告は、本件契約に基づき、有限会社宮本に対し、ミネラル成分を抽出した溶液を、昭和五七年一一月二九日から昭和五八年三月一四日ころまでの間に、四〇〇グラム詰め九〇本、合計三六キログラム分を販売した。(乙18ないし21)

また、原告は、昭和五七年一二月二一日、財団法人日本食品分析センターに対し、右商品の成分分析を依頼し、その結果を同月二八日ころ受領した。(乙30)

(六)  Dと被告Cは、昭和五八年初旬ころ、かつて岡三株式会社の食品衛生管理者に就任したり、Dの論文を代筆してもらったりしたことからDと知り合いであったFを訪ね、ミネラル成分を抽出した溶液を商品化して販売するに当たり、パンフレット類の作成や成分分析等の助言を求めた。

Fは、その後、Dと被告Cの事業を手伝うようになった。(乙64)

(七)  有限会社宮本は、昭和五八年一月ころ、右商品を販売するに当たって使用する商標を登録するために、「生き生き」、「ミネルン」、「イキルン」、「ミネカル」等の商標登録状況を調査し、同年二月一二日、「イキルン」との商標について、商品の区分を第一類、指定商品を化学品、薬剤、医療補助品として出願した(昭和六〇年一〇月三一日登録。第一八一二〇一七号)。(甲4、5、乙13、14)

また、有限会社宮本は、財団法人日本食品分析センターに対し、昭和五八年一月三一日ころ及び同年四月一三日ころに右商品の成分分析を依頼し、その結果を同年二月一二日ころ及び同年四月二五日ころ、それぞれ受領した。(乙31、32)

(八)  原告は、本件契約に基づき、有限会社宮本に対し、昭和五八年四月三日から同年七月一二日ころまでの間に、ミネラル成分を抽出した溶液を四〇グラム詰めフィルムパック三〇〇個入り一ケースとして、合計一六八ケース、二〇一六キログラム分を販売した。(乙22ないし25)

(九)  有限会社宮本は、昭和五八年五月二〇日付の広告紙「C.C.マンスリー」に、右のミネラル成分を抽出した溶液を、商品名「イキルン」として掲載した。また、同年六月九日付日経流通新聞に「イキルン」の記事が掲載され、被告Cは、このころより「イキルン」の本格的な販売を開始した。(乙16、17、弁論の全趣旨)

しかし、同年六月から七月ころにかけて、「イキルン」を販売した顧客から、商品に雑菌の混入が多い、固形物が沈殿している、小袋から液漏れが生じている等のクレームが寄せられ、被告Cは、Dに対し、その製造工程について改善を要求した。原告は、被告Cからのクレームを受け、一部の商品については返品交換処理をしたが、雑菌の混入の点については、具体的な対応はとらなかった。(甲13、乙1、被告C本人)

(一〇)  被告Cは、昭和五八年七月一二日の納品以降、原告との本件契約に基づく商品の購入を基本的に中止するとともに、有限会社宮本に超精密濾過器のデモンストレーション機を導入したり、Fが所有していた濾過器を譲り受けたりして濾過を行い、自ら顧客のクレームに対する対応を開始し、同年八月末ころより一〇月中旬ころまでの間に、三〇〇キログラム程度を販売した。(乙1、60、61、63、証人F、被告C本人)

(一一)  昭和五八年九月ころ、Dは本件特許方法について、特許出願をすることを考え、Fの紹介を受けて、同人の大学時代の同級生である弁理士Bに特許出願手続の代理を委任した。B弁理士は、Dから本件特許方法の説明を受けて特許出願明細書の草稿を作成し、これをDと、同人の希望によりFに送付した。Fは、同草稿を検討して加筆、修正をし、意見を付した上で、B弁理士に返送した。B弁理士は、右特許出願の明細書最終稿を作成した上、再びD及びFに送付し、Dより了承を得たため、同年一〇月一八日、特許庁に対し、特許出願手続を完了した。(甲15、27)

(一二)  その後、被告Cは、FよりDが特許出願をしたことを聞き、ミネラル成分を抽出した溶液を使用した青果物の鮮度保持方法と植物種子の発芽率向上法についての特許出願をすることを考え、同様にFの紹介を受けて、同年一二月三日、B弁理士と面談を行った。Fは、B弁理士に対し、被告CはDと一緒に仕事をしている人物であると紹介した。

被告Cは、B弁理士に対し、Dが商品名「イキルン」の製法について特許出願したと聞いたので、二つの用途発明について特許出願をしたい旨を要望した。B弁理士は、右用途発明の特許出願においても原料である商品名「イキルン」の製造方法は必須記載事項である旨説明したところ、被告Cは、「先のDの製造方法と同じである。」、「Dが製造したものがこの商品『イキルン』そのものである。」と回答するのみで、イキルンの製造方法についての直接的、具体的な説明をしなかった。

B弁理士は、被告Cの説明に基づいて、発明の詳細な説明中にDの特許出願番号を引用した特許出願明細書の草稿を作成して、被告Cに二部交付したところ、Fから電話があり、被告CとDの関係が難しくなっているので、Dの特許出願番号を明細書から削除して欲しい旨の提案がされた。B弁理士は、先にDの特許出願手続の代理を受任しており、被告Cの特許出願手続代理の委任は、被告CとDが一緒に仕事をしていることを前提としたものであって、その前提が崩れた以上は、同様の内容を含む特許出願について被告Cの特許出願手続の代理を受任することはできない旨を伝え、特許出願明細書草稿及び委任状用紙の返却を要請し、同年中ないし翌年初めに、特許出願明細書草稿二通は返送された。(甲15、乙34)

(一三)  被告Cは、右の発明について、別の弁理士に特許出願手続を依頼し、昭和五九年二月八日、発明の名称を「青果物の鮮度保持方法」及び「植物種子の発芽率を向上させる方法」、出願人を有限会社宮本とする特許出願を行った。(甲8、9)

2  被告らは、被告Cが、昭和五六年ころまでに、木炭の炭焼きにより発生する灰に酢酸水溶液を加えて中和し、ミネラル成分を溶液層に抽出する方法を完成するとともに、そのミネラル成分が青果物の鮮度保持・蘇生・成長促進に効果があるとの知見を得ていたと主張し、乙1(被告Cの陳述書)、被告Cの本人尋問の結果中には、右主張に沿う部分がある。

しかし、以下に述べるとおり、本件各証拠及び弁論の全趣旨に照らし、右各証拠は信用することができない。

(1)  本件全証拠によっても、被告Cないし有限会社宮本が、昭和五六年ころまでの間に、灰に酢酸水溶液を加えてミネラル成分を抽出した溶液を製造したこと、製造した溶液の効果等について実験をしたこと、あるいは当該溶液の成分を分析をしたことを認めるに足りる証拠はない。

乙1(被告Cの陳述書)には、被告Cは、昭和四九年ころから昭和五六年ころまで研究を重ね、樹脂のミネラル分を抽出する方法について文献をあさったり学識者を訪ねたりして研究するうちに、栄養学読本(G編)のミネラル(灰分)に関する記述にヒントを得て、樹木を燃焼させて灰にし、その灰に含まれるミネラルを酸の水溶液で抽出する方法が簡単で最良であるという考えに至ったこと、炭焼き窯から出る灰に酢酸水溶液を加えて灰の中のミネラル成分を抽出するという方法は、それ自体極めて簡単な方法であり、被告Cが行った実験・研究の重点は、炭焼きの灰とそれに加える酢酸水溶液との適当な重量比はどれくらいかという点や、ミネラルを酢酸水溶液の溶液層に抽出して得られた原液をどの程度の倍率に薄めて使用すれば青果物の鮮度保持・蘇生や成長促進(種子の発芽促進)に効果があるかという点を実験的に確定することにあったこと、昭和五五年ころから有限会社宮本の得意先に依頼したりして、青果物の蘇生実験や種子の発芽実験を繰り返し行い、昭和五六年秋ころまでには、灰と酢酸水溶液の重量比とか蘇生や発芽促進に効率的な希釈倍率に関する研究をほぼ完成するに至ったことなどが記載されている。

しかし、本件全証拠を精査してみても、昭和五六年以前に、被告Cが学識経験者を訪問したこと、被告Cがヒントを得たとする「栄養学読本」なる書物が存在していたこと、あるいは当該書物に被告Cが右知見を得るに当たってのヒントになり得る記載が存在したことを認めるに足りる証拠はない。のみならず、右当時に、被告Cないし有限会社宮本が、ミネラル成分を抽出した溶液について、その成分等を分析したことを示す証拠も存在せず、本件において証拠として提出されているのは、被告CがDあるいは原告に対して右溶液の製造を打診した後に作成されたことが明らかである、原告の依頼にかかる昭和五七年九月二一日付の成績表(乙29)及び同年一二月二八日付の分析結果(乙30)、並びに、有限会社宮本の依頼にかかる昭和五八年二月一二日付の試験報告書(乙31)、同年四月二五日付の分析試験成績書(乙32)及び同年八月八日付の試験報告書(乙33)のみである。また、右溶液の効用について分析検討した資料についてみても、昭和五八年九月二二日付の岐阜教育大学助教授Hの報告書二通(乙56、57)が存在するのみで、昭和五五年ころから得意先に依頼する等して行ったとする実験の結果、あるいは溶液の効率的な希釈倍率に関する資料等は一切提出されていないのである。

仮に、前記乙1の記載が事実であるとすれば、その研究過程において調査、収集されたこのような資料、実験結果、分析結果等は保管されているのが自然であると考えられる(現に、原告との取引開始前後以降の資料は保管されている。)。それにもかかわらず、本件全証拠によっても、右研究期間に作成されたと認められる資料が存在しないことからすれば、乙1の被告Cの研究調査に関する記載は、にわかに信用することができないものといわざるを得ない。

(2)  次に、被告Cあるいは有限会社宮本が、右当時、その研究に当たって必要となる酢酸水溶液あるいはその他の酸を購入したことを示す資料は存在しない(酢酸水溶液を購入したことを示すものは、唯一、昭和五八年九月九日付の領収書(乙44)のみである。)。

被告らは、被告Cが研究段階において灰を購入していたことを示す証拠として、昭和四九年九月一六日付の領収書(乙5の1)を提出しているが、右領収書には取引品目についての記載がないから灰の購入にかかるものであるか否かは明らかでないのみならず、証拠(甲3)によれば、右領収書に貼付されている収入印紙は昭和五六年四月八日に告示されたものであることが認められ、右領収書が記載の日付に真実作成されたものであるかについても疑いを払拭することができないものである(被告Cは、本人尋問において、右の点について、税務調査が入る関係で、税理士に指示されて有限会社宮本の経理担当者が後から収入印紙を貼付したものである旨供述し、これに沿う内容の税理士の回答書があるが(乙37)、右領収書は被告Cの作成にかかるものではないから、同人には収入印紙を貼付する義務はないのであって、税務の専門家たる税理士がそのような指示をすること自体が不合理である。)。また、被告らは、同様に昭和五一年に灰を購入した際の領収書であるとして証拠を提出しているが(乙59)、同領収書の日付欄の文字は、「昭和59年7月24日」と見るのが自然であり、これをもって被告Cが昭和五一年に灰を購入していたと認めることはできない。

そうすると、本件全証拠によっても、被告Cないし有限会社宮本が、昭和四九年から昭和五六年ころまでの間に、ミネラル成分を抽出した溶液を製造するために不可欠であると考えられる酢酸水溶液及び灰を購入したと認めるに足りる証拠はないものといわざるを得ない。

(3)  前掲乙1には、青果物の鮮度保持及び蘇生について、ミネラル成分が有効であると思いついたきっかけとして、公刊されている食品成分表の中のほうれん草の項目を見ると充分なミネラルが含まれているが、市販のほうれん草を調べてみるとミネラル成分が非常に少ないことが分かり、これらのことから、野菜から失われたものを野菜に還元すれば鮮度の保持が可能になるのではないかという考えにたどり着いた旨記載されている。

しかし、本件全証拠中に、被告Cが調査したとする市販のほうれん草などの野菜の成分を分析したものは存在しない。かえって、被告Cは、本人尋問においては、最近の成分表に記載されている数値を古い成分表の数値と比較して、右のような知見を得たかのように供述を変遷させており(右の成分表についても証拠としては提出されていない。)、一貫性を欠くものといわざるを得ない。実用化に至った発明については、思いついた経緯、きっかけなどを明確に記憶しているのが通常であると考えられるところ、このような重要な事実について、供述が変遷し、あるいはそれを裏付ける資料が何ら提出されていないことからみても、被告Cの供述はにわかに措信できないものである。

(4)  さらに、前記のとおり、有限会社宮本は、昭和五九年二月八日に名称を「青果物の鮮度保持方法」とする発明及び名称を「植物種子の発芽率を向上させる方法」とする発明を特許出願しているが、前記1(一二)で認定したところの、右出願手続の代理を当初に依頼したB弁理士に対する被告Cの言動からも、被告Cが昭和五六年ころまでに、本件特許方法について発明をしていたと認めることはできない。

加えて、前記認定のとおり、FはDの特許出願明細書の原稿に目を通し、加筆、修正を加えた上に意見を付して返送しているところ、その後、有限会社宮本の特許出願明細書にも目を通しており、かつ、両明細書に目を通したのは時期的には二か月程度しか間隔があいていないこと、また、証人Fの証言によれば、Fは、昭和五八年二月ころから、D及び被告Cの事業に助言等し、昭和五八年八月以降は有限会社宮本が行ったミネラル成分を抽出した溶液の濾過等の作業を手伝い、その後、被告会社が設立された後は顧問的立場で関与したことが認められることからすれば、仮に、Dが被告Cの発明を盗用して特許出願をしたのであれば、Fはそのことに気付き、かつ、異議を述べるのが通常であると考えられる。

しかし、本件全証拠によっても、そのような事実を認めることができない。

3  以上述べたとおり、被告Cあるいは有限会社宮本が、昭和五六年ころまでに、本件特許方法と同様の方法を発明し、これを実施していたと認めることはできないから、本件特許方法につき、先使用に基づく通常実施権を有する旨の被告らの抗弁は採用できない。

二  争点2(公然実施)について

1  本件特許方法の出願前に、本件特許方法の方法が公然に実施されていたと認めるに足りる証拠はない。

かえって、証拠(甲15、23、乙64、証人E)によれば、Dは、職人気質で自らの研究成果を他人に見せることを嫌い、ミネラル成分を抽出した溶液の製造も原告のタレ製造工場の一画において行っており、この場所にはDの他、Eと原告の従業員一名の立ち入りを許して製造を手伝わせたのみで、他の者の立ち入りは禁止していたことが認められる。

2  よって、その余の点を判断するまでもなく、被告らの権利濫用の主張は採用できない。

三  争点3について

1  証拠(乙69の1ないし5、乙70の1ないし3)によれば、平成三年四月一日から平成一一年三月三一日までの被告会社による被告製品の販売総額は、別表被告会社売上高一覧表記載のとおり、合計一億二三五四万七八六二円であると認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

2  証拠(甲31)によれば、無機化学製品の分野での技術の実施許諾契約における実施料率は、少なくとも売上高の五パーセントを下らないものと認められる。

そうすると、平成三年四月一日から平成六年九月二六日までの期間についての売上高の五パーセントに相当する額について、被告会社は法律上の原因なくして利得し、原告は同額の損失を被ったものということができる。また、原告は、被告会社に対し、特許法一〇二条三項に基づいて、同月二七日から平成一一年三月三一日までの期間についての売上高の五パーセントに相当する額を請求することができるものと認められる。

したがって、結局、被告会社は、原告に対し、平成三年四月一日から平成一一年三月三一日までの売上総額一億二三五四万七八六二円の五パーセントに相当する六一七万七三九三円について、利得の返還及び損害賠償をする義務がある。

3  当事者間に争いがない事実と前記一、二で認定した各事実を総合すれば、被告Cは、当初は有限会社宮本、被告会社設立後は被告会社において、被告製品を製造、販売していたものである。そして、弁論の全趣旨によれば、右両会社は、実質的には被告Cが全額出資をする個人会社であり、被告Cは、自ら代表取締役として、会社の業務を指示していたものと認められる。

そして、前記一で認定判断したところからすれば、被告Cは、本件特許権、ひいては原告の専用実施権を侵害することを知りながら、被告会社の代表取締役として、主体的に被告製品を製造、販売していたものと認められるから、右各行為について、被告会社との間に共同不法行為が成立し、被告会社と連帯して、被告会社による被告製品の製造、販売により原告に与えた損害を賠償する義務があるというべきである。

なお、本訴請求のうち、被告会社が平成三年四月一日から平成六年九月二六日までの間に販売した被告製品にかかる部分は、民法七〇四条に基づく不当利得返還請求権であると解されるところ、被告製品の販売により実施料相当額の利得を得たのは被告会社であって、被告Cがこれを連帯して返還すべき根拠は見当たらないから、右部分にかかる原告の主張は失当である。

そこで、被告Cが被告会社と連帯して賠償すべき金額について算定すると、不法行為に基づく請求は平成六年九月二七日から平成一一年三月三一日までの期間における被告製品の販売についてであるから、その算定は、平成六年四月一日から平成七年三月三一日までの被告会社の販売合計額に不法行為に基づく請求の期間の割合を按分して算出し、これに平成七年四月一日から平成一一年三月三一日までの被告会社の販売合計額を加算したものを基礎として実施料相当額を算出するのが合理的である。

右算定方法に基づいて算出すると、平成六年九月二七日から平成七年三月三一日までは一八六日間であるから、平成六年四月一日から平成七年三月三一日までの販売金額一八二四万九三五九円を一年間の日数である三六五で除した上で一八六を乗じると、九二九万九六七三円となり、これに平成七年四月一日から平成一一年三月三一日までの期間の販売合計額六九六五万六八八二円を加算すると、七八九五万六五五五円となる。右合計額に、前記2の実施料率五パーセントを乗じて実施料相当額を算定すると、三九四万七八二七円となり、右限度で、被告Cは、被告会社と連帯して、原告に対して損害を賠償する責任がある。

4  本訴は、被告らの被告製品の販売行為により原告が被った損害の賠償及び不当利得の返還を求めると共に、被告方法の実施及び被告製品の製造、販売等の差止めを求めるものであるところ、本件に現れた全事情を総合考慮すれば、原告が本訴の提起・追行に要した弁護士費用は、被告会社に対する請求にかかる部分については、金八〇万円と認めるのが相当である。そして、前記のとおり、被告Cは、損害賠償の一部を連帯して負担するものであるところからすれば、右弁護士費用相当額について、五〇万円の限度で、被告会社と連帯して賠償すべきものと認めるのが相当である。

5  したがって、原告が被告会社の行為により被った損害は、金六九七万七三九三円と認められ、また、被告Cは、四四四万七八二七円について被告会社と連帯して賠償をする責任がある。

そして、右各金員について附帯請求の起算日を検討すると、前記一、二で認定した事実によれば、被告会社は、悪意の受益者と認められるから、平成三年四月一日から平成六年九月二六日までの期間については、受けたる利益に利息を付して返還する必要があり、また、被告らは、平成六年九月二七日から平成一一年三月三一日までの期間の実施料相当額については、遅延損害金を付して支払う義務がある。

そうすると、被告会社は、平成三年四月一日から平成九年三月三一日までの被告製品の売上高合計九四二四万二七〇〇円の五パーセントに相当する四七一万二一三五円については、遅くとも、右受益又は不法行為の時よりも後である平成九年九月二七日(訴状送達の日の翌日)から、また、平成九年四月一日から平成一一年三月三一日までの売上高合計二九三〇万五一六二円の五パーセントに相当する一四六万五二五八円に弁護士費用相当額八〇万円を加算した二二六万五二五八円については、遅くとも、平成一一年四月一日から、それぞれ支払済みに至るまで、年五分の割合による金員を付して支払う義務があると認められる。

被告Cについては、被告会社の被告製品の売上高のうち、平成六年九月二七日から平成七年三月三一日までの売上高に相当する九二九万九六七三円(前記3参照)に平成七年四月一日から平成九年三月三一日までの売上高合計四〇三五万一七二〇円を加算した四九六五万一三九三円の五パーセントに相当する二四八万二五六九円については、遅くとも、不法行為の時よりも後である平成九年九月二七日から、また、平成九年四月一日から平成一一年三月三一日までの売上高合計二九三〇万五一六二円の五パーセントに相当する一四六万五二五八円に弁護士費用相当額五〇万円を加算した一九六万五二五八円については、遅くとも、平成一一年四月一日から、それぞれ支払済みに至るまで、年五分の割合による金員を付して支払う義務があると認められる。

四  よって、原告の請求は、主文の限度で理由がある。

(裁判長裁判官 小松一雄 裁判官 高松宏之 裁判官 水上周)

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